ペット火葬の仕事をしている人ってどんな人なんだろう。
よくお伺いしたご家族様とお話しをしていると、
『なぜこのペット火葬の仕事を選んだのですか?』
とご質問をいただくことがあります。
数多ある職業の中からどうしてこのような職業選択に辿りついたのか純粋に気になるのかもしれません。
また、最愛のペット達の最期の見送りを任せるのだから、それがどんな人なのか知っておきたいという思いもおありなのでしょう。
ここでは、私自身がなぜこの仕事を選ぶに至ったのかについて書きます。
動物を利用する仕事と心のジレンマ
ペットの葬儀業という仕事は本屋さんに置かれている職業名鑑にも掲載されていないような仕事です。
試しに『ペット 関わる 仕事』とネットで検索してもその中にペットの火葬業なるものはほとんどヒットしてこないと思います。
動物に関わる仕事にも多くの職業があります。
獣医や、トリマー、ブリーダー、ペットショップ、ペットシッター、動物看護 etc…
動物に関わりたいと思っている人にとって、
亡くなった動物と積極的に関わりたいという動機の人はまずいないでしょう。
私自身も、動物に関わる仕事に就きたいと思い、入学した大学では様々な動物に関わる仕事について学び、多くの講義や実習を受けました。
ただ残念ながら、そのどこにもこの”ペットを弔う“というこの仕事を知るきっかけはありませんでした。
当時、私が大学に入学した理由は、だた動物のことが好きだから勉強してみようという単純な理由でした。
しかし入学して感じた違和感は、動物に関わる仕事のその多くが動物のためでは無く、人のために動物をどう利用するかについて考えているということでした。
当たり前のことなのですが、毎日食べている肉は動物を育て、殺し、解体したものです。
命を助ける薬は多くの動物実験という犠牲の上にあります。
ペットを商品として売り利益をあげるためには沢山の子を早いサイクルで産ませる必要があります。
そういった現実を理解させ、皮肉にも動物のことを好きだと入学してきた学生達に動物をどう社会に役立てるかを学んでもらう。
それが大学が学生に最初に教えることでした。
『動物が好きというだけでは仕事にならないんです』
『動物を人のために利用するという現実を直視してください』
これは突き詰めるととても難しい問題で、常に心のジレンマでもありました。
そういった現実にある動物の仕事の実態を見ていった結果、動物関係の仕事に就きたいという思いは、だんだんと薄れ、私の興味はアカデミックな研究の世界へと移行していきました。
心の病になる人を助けたい
当時、私の周囲には鬱病や統合失調症など、心の病になる人がたくさんいました。
家庭環境や極度のストレス、原因は様々でしたが、そんな人たちの助けになれる力が私にはありませんでした。
自分自身に力があれば心の病になった人を助けることができるかもしれない。未然に防ぐにはどうしたらいいのか。
そんな思いを常に持っていました。
大学の進級が進むと、研究室を選択することになります。
その頃にはすっかり動物と関わる仕事をというよりは、
心の病になった人の助けになるという観点から、鬱や精神疾患の原因について研究している脳科学の分野に身をおいていました。
そこでは、たくさんの動物達の命を礎に研究を行いました。
数多くの動物の命を奪うことが辛くても、これは誰かが引き受けなければいけない研究だと思うことにしていました。
利用する動物達の命を無駄にしないために結果を残す。それがせめてもの報いなんだ。
そう心に言い聞かせながら、日々を送っていました。
ペット葬儀の仕事を選ぶに至る
研究は時に孤独です。
多くの研究者達が積み重ねてきた結果がいずれ歴史を変える大きな社会貢献へとつながる。
分かっていても自身の基礎研究の結果が直接社会に貢献することなどそうは起こらないのが現実です。
莫大な費用と時間だけでなく、動物を好きだといっていた自分が、いつの間にか動物達の命を無駄に利用しているのでは?と何度も思いました。
心の病を治そうと研究に没頭する自分がいつの間にか心の病になりそうになっている。
そのくらい、今思えばその頃は心に負担がかかっていました。
大学院を卒業後、企業の研究職に就きましたが、結局長くは続きませんでした。
転職を考え出したそのころの私は、人間の経済活動を突き詰めたその先が動物を苦しめる結果につながる仕事にはもう就きたくないと思っていました。
ぺットの葬儀業を知ったのはそんな時でした。
当時彼女だった現在の妻が愛犬を亡くし、火葬を依頼したときでした。
ペットの死。いつかくるその日は、どこか頭の片隅に追いやって考えたくないことかもしれません。
亡くなってから初めて考えるそういった事柄の一つです。
当時急いで探した火葬業者でしたが、残された家族に気持ちが向いている対応ではなかった様でした。
悲しい思いをしている家族をさらに悲しくさせる対応は非常に胸が苦しめられ、ペットを愛する一人として、大きな問題をそこに感じました。
そして、心ない業者がいるのなら、自分たちが心を込めた対応のできる火葬業者になればいいのではないかと考えたのがきっかけでした。
(現在のふくふくやまの創業のきっかけについてはこちらの記事からどうぞ。)
仕事を続けるには”モチベーション”が必要
どんな”モチベーション”でこの仕事を続けているのか。
これはどんな仕事をするにせよ私は非常に大事なことだと思っています。なぜなら、この想いがなければ仕事を継続することなどできないからです。
私は前述の経緯もあり、できれば心を病んでしまうその前に、心の負担を軽くできるそんな存在でありたいと常々考えています。
ペット葬儀という仕事から心のケアというアプローチはとても珍しいと自分でも思います。
でも目的は常に同じところにあると思っています。
このペット葬儀という仕事を通して、ペットを亡くされた方の悲しみに寄り添うことで、辛く悲しい気持ちを少しでも楽にできたらという思いで仕事を続けています。
そして、ペットとの最期のお別れのひとときを穏やかに迎えることが、ペットロスの悲しみを和らげ、残された家族の心のケアにつながるのだと感じています。
また、これまで私たちに返しきれないほどの多大なる恩恵を与えてくれた動物達へ、せめてもの報いとして最期の時を安らかに、そして感謝気持ちとともに送ってあげようと思っています。
ペット葬儀の仕事のやりがいとは?
ペットの葬儀の仕事は、動物の遺体を扱う仕事です。仕事のイメージから、大変でしょう?辛いでしょう?と声をかけてくれる方もいます。
意外かもしれませんが、辛いなど全く思ったことはありません。
これは、少し変なのかもしれませんが
亡くなっていてもその横顔が可愛いと思ってしまうことの方が多いかもしれません。
大好きな動物達の最期を、真心をもって一緒に見送れる。そこには今まで私が経験した動物に対する贖罪の思いやジレンマ、辛さなどは一切ありませんでした。
そして自分自身が社会に貢献しているのだと感じさせてくれるのは、今まで訪問させていただいた家族の方から頂いた感謝のメールやコメント、手紙の数々です。(これまで頂いたお礼のコメントはこちら)
これは本当に私たちの仕事の原動力であり、やりがいだと思っています。
プロフィール
ふくふくやま 代表
丸山 徹歩(まるやま てっぽ)
2013日本獣医生命科学大学大学院 卒
理化学研究所 脳科学総合研究センターに在籍(大学4年〜博士課程前期2年)
2013一部上場企業 研究所研究員となる
2014ペット仏具の通販サイトふくふくやま
を、妻と共に創業する
2016宮城県の訪問ペット火葬ふくふくやまを開始
現在に至る。
ほとんどの方にとってペットの葬儀は初めてのことです。私たちについて知ってもらうことで、少しでも安心してペット葬儀を任せてもらえる様になればと思っています。