とってもやさしいまなざしで愛犬のことを見ていてくださっていたある一組のご夫婦が、声をかけてくださいました。
「何歳ですか?小さいころから飼っているの?」と聞かれ、
「4歳です。実は里子で、最近うちに来たんです。」
とお答えしました。
我が家の愛犬は、以前飼っていたご家族が遠方に転勤になり、どうしても飼えなくなってしまったということで、身体も大きいため引き取り手がなかなか見つからず困っていたそうです。
我が家で以前、おなじ犬種を飼っていたことから、「引き取ってもらえませんか?」と相談を受けました。
先代犬が旅立って3年、新たに犬を迎え入れるための心の準備も、育てるための家族の環境も整ったところでしたので、思い切って引き取ることにしました。
偶然、そのご夫婦も以前飼っていたワンちゃんが、里子として引き取った子だったそうです。
その子は、前の飼い主が面倒が見切れなくなって、もともといた繁殖所に戻されてしまい、
そこで途中から戻された故に犬同士の順位付けがあり、他の犬からいじめられておびえていた子だったそうで、見かねておもわず引き取ってきたそうです。
新しいご家族の愛情に恵まれ、はじめは怯えて居た子が、老人ホームのセラピー犬として活躍できるほど、穏やかで優しい子になったそうです。
老人ホームでの衝撃的な出会い
ある日、セラピー犬となった愛犬を連れて、老人ホームに行ったときに、そこにご入居されている方が
「その犬、うちで前に飼っていた子に似ている。でもその子、ちょっと残念な子だったから手放してしまった。」
とおっしゃっていたそうです。
「名前はなんていうの?」ときかれ、答えたところ、そのご老人は犬に近づいていき、おもむろに犬の身体を触って、昔自分が手放した子だと確信したそうです。
ご老人は、「こんなにいい子になるんだったら、手放したりするんじゃなかった・・・いい家族に引き取られて本当によかった。でも、手放したりして本当にごめんなさい・・・」
と謝ったそうです。
私はこの話を聞いたことをきっかけに
「里子としての幸せ」を考えるようになりました。
一度家族と暮らしていた子が、家庭の事情で家族と別れることになり、新しい家族に迎え入れられるということ。すべて人間の事情です。
中には、新たな飼い主を探してすらもらえず、保健所に連れて行かれてしまう子もいます。
幼少期における教育をされてこなかったために、殺処分されてしまう命が実際にあります。
里子となるペット達は、残念なことに適切な教育や社会性を身につける場がなかったことが原因で、
引き取られた家庭においても問題行動を引き起こす可能性があります。
人間も親が、子供に教育することや、正しい道を教えてあげること必要なように、
ペットにも根気強く教育し、向き合う必要があることを知った上で、ぜひ、ペットの里親となってほしいと思います。
「里子=かわいそう」なのか?
「里子」と聞くと、慣れ親しんだ家族と離れ離れになったからかわいそうだ、というイメージが、多くの人にあると思います。
だから、里子として迎え入れた犬に対して、なんとなくかわいそうな気がしてつい甘やかしてしまうご家庭も多いのではないでしょうか。
里子として出される犬には、家の都合で飼えなくなってしまったという環境の都合もありますが、「問題行動」で家族が手に負えなくなり、手放されてしまう子も多いといいます。
問題行動は、飼い主の根気強いしつけで解決することができます。
犬は、もともと群れで暮らす動物。犬にとっては、その家族が「群れ」なのです。
問題行動で悩んでいる飼い主さんは、ちゃんと「群れ」のリーダーになっていますか?
毅然とした態度と、叱るときと褒める時のメリハリをきちんとすることで、誰もが群れのリーダーになることができます。
40kg以上体重がある大型犬に対して、きちんと「No!」と言える3歳の幼児がリーダーになることもできるのです。
人の都合でやむなく家族と別れることになったその境遇は、私も気の毒だと思います。
だだ、「いつまでも家族一緒に暮らすための、正しいルールを教えてもらえなかったり、他人やほかの動物に怯えることで危害を加えたりしないよう、子犬のころからいろんな経験をさせてもらえなかった」ということのほうが、よっぽどかわいそうだと感じています。
吠えて言うことを聞かないから、散歩のときにものすごく引っ張るから、家を荒らすから、他人やほかの犬を噛むから・・・これらはすべて、教えれば直ることです。子犬でも成犬でも、しつけはできます。
まずは最低限の家族のルールを守るよう教えることができれば、犬と人は、同じ屋根のしたで生涯をともに暮らすことができるのです。
覚悟を決めて里親となった家族は、迎え入れた子を生涯、大切に育てていくことを心に決めています。
里親となったからには、その気持ちは皆持っていることと思いいます。
犬の半生をよりよく過ごすために、色々んな経験や教育をしてあげることがその子にとっての幸せにつながります。
犬は、「今」を生きる動物です。「今の環境」「今の家族」を全力で受け止め、暮らしています。
しっかりと根気強く、教えてあげれば、どんな犬でもお利口な犬になるはずです。
里親として・・・私たちが愛犬にできること
「ルールを守ることで、一緒にいろんな経験をさせてあげたい。」
愛犬にとっては、私たちが今の家族です。愛犬にとっては、今の家族が「群れ」です。
その家には、その家のルールを作りましょう。
・高齢の方や幼児にけがをさせないこと
・散歩のときには引っ張らないこと
・甘噛みをしないこと
上記のような、最低限のルールを作り、徹底します。
生まれ育った環境と現在の生活が変化した愛犬にとっては、少し努力がいりますが、快適な生活を過ごす上で家のルールを覚えてもらう必要があります。
そのルールが、愛犬にとっての「当たり前」になれば、「我慢」というストレスなく一緒にいろんな場所に行って遊んだり、いろんな人と会って可愛がってもらうことができるのです。
時にペットにも毅然と接する必要があるのは 今後の良い経験をさせてあげたい。という思いからです。
たとえば、群れの中での立ち位置を確立するために、犬が「私のほうがえらいのよ!」と家族に示すために、「マウンティング」をすることがあります。
身体が大きい犬にマウンティングをされると、子供や高齢者は倒れてけがをしてしまいます。また、犬がじゃれているつもりで甘噛みやマウンティングをしても、歯や爪は鋭いのでケガをする可能性 は十分にあります。
特に新しい家族(=群れ)のなかで自分の順位を位置付けたいと思っている犬には、マウンティングをしたり、甘噛みをすることで主張したり、という行動が見られます。
しかし、やってはいけないこと、をきちんと教えることで、他人にけがをさせる心配も無く、いろんな人に会ったり、遊んだりする経験ができます。
たくさんの人に愛されるためのルールを
これからの生涯で会うたくさんの人に愛されるためのルールも、家族が教えなければなりません。
迎え入れたペットには、いろんな人に会い、いろんな動物に会い、可愛がられてほしいと思っています。
里親となる場合、迎え入れる犬がしつけをされている子でも、「我が家のルール」としてしつけはまた1からする覚悟で迎え入れなければなりません。
我が家の愛犬も引き取って3か月ですが、家族でルールを教えることで、他人やほかの動物にもやさしく接することができる子になってもらい、いろんな経験をさせてあげられるようにしたい。それが、私の願いです。